
12月16日付け朝日新聞夕刊のトップに、「日韓 ハグから始めよう」と題し、桑原功一さんとユン・スヨンさんがそれぞれ相手国の街角に立ってフリーハグをしている写真が載っている。勇気ある若者たちの一途な思いをぜひご覧いただきたい!(以下 朝日新聞より)
日韓関係をあきらめたくない――。そんな願いを抱いて相手国を訪ね、街角で見知らぬ人とフリーハグ(抱擁)=キーワード=を続ける男女がいる。桑原功一さん(35)=群馬県伊勢崎市=とユン・スヨンさん(25)=韓国・慶尚北道。両国の政治対立が続くなか、草の根レベルの相互理解が目標だ。(編集委員・永井靖二、ソウル=武田肇)
10月5日午後、ソウル中心部の光化門広場。日本の大学院進学をめざしているユンさんは「私は日本が好きです」と手書きしたハングルの掲示を手に、母国では初めて、道行く人にハグを呼びかけた。傍らで、桑原さんがビデオカメラを回す。2人が韓国で会うのは今年9月以来、2度目だ。
通行人の韓国人男性が2人を見て、「日本が好きだって?」とつぶやき、いぶかしそうな表情を浮かべて通り過ぎた。一方、数十分後には、中年の韓国人女性が「私も本当は日本が好き」と韓国語でささやき、ユンさんを軽く抱きしめた。この日は約2時間で20人近くがハグに応じた。
広場は、韓国が日本統治からの解放を祝う8月15日の光復節前後に「NO JAPAN」「NO 安倍」のプラカードを掲げた集会が開かれた「抗日」の象徴だ。ユンさんが広場での活動を選んだのは、光復節の10日後にこの場所で、桑原さんがアイマスクで目隠ししてハグを求めていたことが理由だった。
桑原さんは当時、集会に参加する人々から少し離れ、ハングルの看板を掲げていた。「韓国にも、日韓友好を望む多くの市民がいると思っています。私はみなさんを信じます」。怖さはあったが、あえて普段はしない目隠しをしたのは、「相手を選ばず、逃げない」との覚悟を示したかったためという。
群衆から奇異の目が注がれるなか、女の子を連れた母親が近づいてこう言った。「カムサハムニダ(ありがとう)」。桑原さんとハグすると、女の子も同じ言葉を発して続いた。すると、片言の日本語や英語で「ありがとう」「あなたは勇気ある人だ」と語りながら抱擁しに来る人が増え、ついには集会の参加者も加わって1時間半で約50人がハグに応じた。
友人が撮影した動画をあとで見たところ、20秒近くハグしてきた韓国人男性は、桑原さんの行動に感動して涙ぐんでいたという。
ハグの様子は地元テレビで放映され、大きな反響を呼んだ。動画サイト「ユーチューブ」に投稿した内容には、何千もの反応が寄せられた。好意的なものが9割、その反対が1割だった。桑原さんは「私も以前は韓国や中国が嫌いだった。でも、実際に人々と接して考えが変わった」と話す。
■動画見て「私も」、京都に立つ
桑原さんは2007年に日本の大学を卒業後、アルバイトなどで資金をため、世界を旅行している。ハグを求める活動を始めたのは11年。留学先のフィリピンで韓国人の友人ができたことがきっかけだ。「日本人と韓国人は仲良くできる」。街角でハグする動画をネット上に投稿すると、日韓双方から反響があった。
15年に静岡大に留学していたユンさんもその一人。当時、慰安婦問題をめぐり日韓関係が停滞しており、ユンさんは桑原さんの動画を見て、「韓国人みなが日本人を嫌いなわけじゃないと、自分も伝えたい」と連絡し、アドバイスを求めた。
京都で桑原さんと待ち合わせ、チマ・チョゴリを着て新京極の街角に立った。通行人にハグを呼びかけると、着物や浴衣を着た日本人が次々に応じてくれた。その後も、東京や大阪、札幌など日本の12都市で計約20回、チョゴリ姿でハグを実施。両国関係がさらに悪化した今年8月には、東京・浅草寺前で「私は韓国人です」という掲示を手にハグを求めた。桑原さんは多くの現場でその様子を撮影してネット上に投稿。特に浅草寺前で撮った動画は、5日間で再生回数が13万回に達したという。
ユンさんは、最初はためらい、遠巻きに見る人が「応援します」「頑張れ」と言ってハグに応じてくれる姿を目の当たりにしてきた。ネット上には「加害者(日本人)が被害者(韓国人)をハグしてどうする」といった韓国語の批判もある。それでも、ユンさんは「政府は対立していても、個人はつながれるという手応えを感じる」と話し、こう続けた。「韓日関係をあきらめるのは悔しい」。今後も韓国の街角に立つつもりだ。
桑原さんは日本人と韓国人の親を持つ若者や、韓国在住の日本人留学生にも求められ、ハグのアドバイスをする。「ぼくらがやっていくことを笑う人もいるかもしれない。ひとりでもふたりでも気持ちに変化を与える方法があるんだと伝えていきたい」と話す。
◆キーワード
<フリーハグ> 「見返りなしに抱擁する」という意味。街頭で見知らぬ人に抱擁(ハグ)を呼びかけ、ぬくもりを伝え合ったり、愛や平和を確認し合ったりする活動を指す。「フリーハグズ」とも言われ、2000年前後から米国で広まった。活動の様子を動画サイトに投稿して共感の輪を広げることもある。

10月26日には、スヨンさんが大阪難波の戎橋でフリーハグ・・・その時に撮ってもらったお宝写真だ(^^;)
坂本 洋
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